参議院予算委員会で締めくくり総括質疑が行われましたが、与党側の不手際ではすまされない酷い対応により、委員会は2時間遅れでの開会、その後もたびたび議事が止まるなど、結局3時間ほどずれ込んでの質疑終局、採決となりました。
予算関連法案としての所得税の一部を改正する法律案も財政金融委員会で採決が行われ、採決に先立つ討論に各会派からの討論に、断固反対の立場で討論を行いました。
その後、夕刻から参議院本会議場が開かれ、令和6年度予算が賛成多数で可決成立しました。
70時間に及ぶ予算委員会での質疑を経ても、自民党裏金問題は、全容解明されるどころか、疑惑の闇は深まったと言えます。
予算や税制は、政治献金・パーティー券購入の大企業優先が明らかで、物価高に苦しむ国民、価格転嫁出来ない中小企業に寄り添う姿勢がありません。
岸田政権の政治姿勢を質すべく、今後の各委員会での法案審議に全力で対応していきます。
ご参考までに、以下に私が読み上げた反対討論を掲載します。
『所得税の一部を改正する法律案に対する反対討論』(参議院議員柴慎一)
立憲民主・社民のしばです、しば慎一です。
私は会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、反対の立場から討論いたします。
(税制による分配)
直近の日本経済には、バブル崩壊後「失われた30年」とも呼ばれる長期デフレ、まさにコストカット型経済からの脱却に向けた動きが始まっています。
3月期の上場企業の純利益は過去最高を更新することが見込まれ、今春闘での賃上げ率は、約30年ぶりの高水準を実現した昨年を上回る予測もあります。日経平均株価は史上最高値を更新、日本銀行は金融政策の正常化に向けて一歩を踏み出しました。
いまこそ30年続いたデフレから完全脱却し経済の好循環を実現するため、企業収益の果実を幅広く国民全体に行き渡らせる「分配」政策が必要です。
その観点から見ると本税制改正案の内容は不十分と言わざるを得ません。
(賃上げ促進税制の拡充)
賃上げ促進税制は、総務省の政策評価や財務省の内部勉強会で指摘されるように、本税制が企業の賃上げを促進しているのか、その因果関係は不透明なまま、拡充されることとなります。
業績が好調で、賃上げ原資が潤沢な大企業は、減税措置がなくても賃上げが可能です。そうした大企業への減税を縮減し、その財源を用いて、中小企業の賃上げを後押しする直接支援を行うべき。
一部の自治体では、中小企業の賃上げを実現するため、直接補助金を支給する制度を実施している実例があります。地元企業の厳しい実態を踏まえ、実効ある支援を実践する自治体の取組みを見習い、政府も急ぎ有効な中小企業の賃上げ政策を検討すべきです。
(所得税の定額減税)
所得税の定額減税について、既に22ヶ月連続で実質賃金はマイナスであり、国民は長らく物価高に苦しんでいます。実施されるのが本年6月では物価高対策としては遅きに失しています。
なぜ迅速かつ事務負担も軽減される「給付」としなかったのか。政府は、「減税」こそ「デフレマインドの払拭につなげるため、所得の上昇をより強く実感して頂ける」と主張しますが、企業や自治体に膨大な事務負担をかけてまで、「減税」に固執する政策効果は、最後まで明らかにされませんでした。
将来的には、防衛増税に加えて、子ども・子育て支援金の保険料負担増が待ち受けています。相矛盾する方針を政府が見直さない限り、今回の定額減税が、国民から理解され、所期の政策目的を達成できるはずもありません。
政府は国民負担をめぐる方針を統一し、国民にわかりやすく示すべきです。
(租税特別措置)
我が国における租税特別措置は、世界の研究機関からもその不透明性を指摘され、世界でもその評価は低位にあるとされています。また巨額の税収減に見合うだけの政策効果が上がっているのかも疑義があります。
戦略分野国内生産促進税制やイノベーションボックス税制は、最終生産者である大企業や、知的財産権等の資本を既に保有する企業への減税に繋がるだけです。
減税ではサプライチェーン全体への波及効果、及びスタートアップ企業の成長が実現されるのか疑いが払拭されません。
租税特別措置の政策効果の透明性の向上と補助金との政策効果の比較検討を政府は明確にすべきです。
(自民党政治とカネと税制)
税制は、企業や家計の行動や意識に広範な影響を与え、回り回って社会構造に変化を及ぼす力を有します。それゆえ税法は国会審議においても予算関連法案として高い重要性を持つものです。
その令和6年度税制改正案が審議される渦中において、自由民主党の派閥「裏金」問題の全容解明が全く果たされていません。
また脱税の疑いがある議員が、検察の捜査が終了したことをもって、あたかも罪を免れたかのように振る舞い、国民の義務としての納税を自ら進んで行わない。税務当局も、国民の信頼確保に向けた具体的対応、税務調査の実施について明言を避け続けています。
裏金の原資となったパーティー券を購入した企業団体への「恩恵」税制は大いなる弊害を日本社会にもたらし、政治に「働くもの」や「生活者」へのまなざしが置き去りにされ続けています。
本税制はそうした悪しき自民党政治の象徴に他ならず、そこからの転換を期するためにも、明確に反対することを主張して、私の討論を終わります。
ご清聴ありがとうございました。
以上
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2024年3月29日 |
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